失恋した人が長い髪を切るとはいつの時代だったか。 私はもちろんそんなセンチメンタルな理由もなく、マサヒコさんに出会ってとてつもなく長い間のロングヘアにあっさり終止符を打った。いや打たされた? 今ではその名残りを微塵も感じさせないほどショートヘアが板について周りの人からのお誉めの言葉に調子にのる始末。 美容師さんは、魔術師と紙一重だ。たとえ自分のような取り柄のない顔立ちでもわずかな魅力をも引き出してくれる。 歩く広告塔と言われるほど、私の髪型を見てイーズさんに足を運んで下さる方が多いことには驚くばかり。 一方、私が勤めているレストランにいらっしゃるお客様の中に、うわ〜素敵な髪型だなという方をみつけると、決まってイーズさんからのお帰り…。 ああ、やっぱり。 飛び抜けたかっこよさだ。 『髪結いの亭主』というフランス映画は、子どもの頃から女性の理容師に憧れていた男の人の話だが、イーズさんへ行くと、男性でなくとも主人公の気持ちが分かるような気になってくる。 薔薇やグレープフルーツのシャンプーの香りに包まれ清潔感に溢れた柔らかな空気の漂う広場。日常から半歩踏み外れた独特のファンタジックな色気にうっとりしてしまうというのも大げさではない。 レストランやコンサート同様、おしゃれをして出かけたい特別の場所である。 私は髪結いの女房に憧れたことはないが(だってイーズさんのスタッフみたいな素敵な方がいつも隣りにいたら四六時中ドギマギして大変だ)、美容室はその小さな箱の中のわずかな時間で髪型のみならず気持ちまでも変えてしまう格好の舞台だ。 雑誌に目を通すのも惜しいくらいハサミを持つ指先を眺めていたいと思う。 素人目線からも、その技術の高さに惚れ惚れする。 スタッフの個性を観察するのもおもしろい。 みんなの醸し出す空気からもセンスの良さが容易に想像出来る。 つかず離れずの微妙な会話も心地いい。 もしも、美容室選びに迷ってこのページに辿り着いた方がいるとしたら
、 映画を観るような感覚で恵比寿の街角イーズさんの扉を叩いてみるといいかも しれない。 おそらくスクリーンに繰り広げられる感動的なシーンの1コマ1コマのラストに、ハッピーエンドに塗り替えられた現代版『髪結いの亭主』の主人公をご自身の中に垣間見ることになるでしょう。 そして映画鑑賞の後には斜向かいの小さなレストランの扉を叩いてみるのも悪くない(笑)。 果たして 『イーズさんのお帰りですか?』 と声がかかるかどうか お試しあれ。 |